シリコーンオイル、鉱物油、植物油脂…一体どれが良いの?
かつて、「天然!天然!」と盛んに宣伝する会社がありましたね。近頃は見かけないけど、どうなってるのでしょう?(なんだか、最近某通販会社は天然由来のシミ、シワ対策を盛んに宣伝していますが。)
もっとも、今でも「自然」「天然」を売りにする化粧品は数多くありますし、他ならぬ我が社も、自然派イメージで訴求しております(笑)
実際、美容成分の多くは天然素材から抽出されたものや、それに加工を施したものが大半ですから。
◉化粧品業界では、シリコーンオイルが隆盛
しかし、オイルに関しては、やや趣が違ってきます。
昨今、皮膜素材として主流になっているのは、ジメチコンやシクロメチコンなどのシリコーンオイル。それに併せて、ワセリンやミネラルオイル、流動パラフィンなどの鉱物油の良さも認識され始めているようです。
シリコーンオイルと共通するのは、
1.酸化されない
2.分子量が大きく肌に浸透しないので皮膜効果が強い。
3.肌への刺激が少ない。
4.何より、落ちにくいため、長時間の保湿やメイクのベース素材として優れています。
ただし、質感や使用感での面でシリコーンオイルは鉱物油より優れ、尚且つ撥水性が強く、熱にも強い。鉱物油のイメージが良くなかったこともあり、現在はシリコーンオイルが主流です。
◉強い皮膜効果は諸刃の剣
もっとも、肌には決して馴染まないシリコーンオイルや鉱物油は、役割を終えたら、きれいに落とし切らないと、強い皮膜効果が逆に肌トラブルの原因となります。ゆえに、洗顔の強度は当然強くなり、肌への負担は大きくなります。
某通販メーカーさんは、シリコンは簡単に落とせると行っていますが、「撥水性が強く」「熱にも強い」オイルが、肌に張り付いた状態から簡単に落とせるのでしょうか?強さは諸刃の剣。私は疑問に思います。

◉機能的にはシリコーンオイルの方が良い?
一方、植物性油脂は脂肪酸やスクワレン、ワックスエステルなどが主な成分。
これらは酸化リスクもありますし、紫外線も得意ではありません(オレイ酸は酸化されにくいのですが、植物油脂には不飽和脂肪酸など、酸化されやすい脂肪酸も含んでいます)。
また、水や熱にも決して強くありません。「何だか、天然の植物オイルって全然良いところがないね。」と思われるでしょう。確かに、肌のバリア機能の代替品やメイクの土台としてはシリコーンオイルや鉱物油の方が優れていると思います。

◉天然の植物油脂は肌に馴染みやすく落としやすい
一方で、植物油脂の特徴は、皮脂を構成する成分が多く肌に馴染みやすいことです。
このことは、
1.肌に残存しても心配がない。
2.肌を柔らかくしたり、滑らかにしたり、肌艶を良くしたりという皮脂としての効果が期待できる。
3.一緒に配合している油溶性の美容成分などを肌に馴染ませるのにも一役買ってくれます。
4.一方で、水や熱に強くないということは、ぬるま湯や優しい洗顔で肌から落とせることになり、洗顔における肌への負担が軽くなるというところが利点になります。
◉洗顔は肌の潤い成分を多量に溶出させる
洗顔は、水であれ、石鹸であれ、クレンジングであれ、肌が自ら作り上げ育んだ「NMF」と「セラミド」という大切な保湿成分を溶出させます。
強い洗浄力を持つ石鹸やクレンジング製品で洗顔をすれば、当然溶出量は大きくなります。これでは、せっかくスキンケア製品で肌のお手入れをしても逆効果ですね。
私達は、肌の乾燥は洗顔の頻度と強度が一番大きな要因となっていると考えています。それゆえ、肌のバリア機能をサポートしながらも洗顔リスクを軽減できる植物油脂を皮膜素材として選択しています。

◉天然だから安心ではありません!
ただし、「天然!天然!」と叫ぶほど、安全だと考えるのは早計です。
実は、植物油脂には、植物の色や香り、苦味や渋味といった部分に私達のお肌や健康に有益な成分が含まれている一方で、逆にアレルギーを引き起こす成分も含んでいます。
天然の植物油脂のメリットを活かすためには、素材の風味を活かす水蒸気留法や圧搾法などで抽出したピュアな未精製のオイルが理想です。オイルだけでなく、ポリフェノールやカロテン、ビタミンなどの美容成分もリッチですから。
しかし、未精製なオイルは、肌に刺激となる成分やアレルギーを引き起こす成分も含んでいる可能性があるため、化粧品で使用されるオイルは、ここから精製をして、そういった成分をできるだけ取り除いたものを使用します。
多くは、溶剤を使って工業的に抽出精製した、植物特有の風味や色合いなどを取り除いた油脂を使っていますが。
◉大切なのは「精製レベル」
食品用途では、風味や色合い豊かなオイルの方が求められますが、肌へのアレルギーリスクを考える化粧品では、天然素材としての魅力は半減しますが、風味や色合いがなくなった「油脂」「脂肪酸」だけの方が安心なのです。
いずれにせよ、天然だから安心で安全というのはイメージにすぎません。
天然油脂であれ、鉱物油であれ、精製レベルの高いものは安心して使えますが、精製レベルが低いものは、肌トラブルの原因となります。
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